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形見のそろばんケース(刳り物) [特注の小物]


 お久しぶりです、ご無沙汰してしまってごめんなさい。実は昨年の秋から身内の健康問題が発生してすっかり生活が変わってしまい、仕事と病院で精一杯でブログどころではなくなってしまっています。そんな中でもブログからの嬉しい注文がいくつかありましてね、今日はそのひとつを。

 昨年の8月のこと、フォトフレームを注文下さった方から祖父の形見のそろばんのケースをお願い出来ないだろうかとのお問い合わせがあったのです。もちろんお引き受けして、そのそろばんを送っていただいてびっくり。

001、形見のそろばん.JPG

 立派なそろばんで、

002、上端留形蟻組み継ぎ.JPG

 4方枠の組み手は「上端留め蟻型組み継ぎ」ということになるかな?いい仕事してます。それと最初は気がつかなかったのですけど、側面に小さな小さな、、、

003、楔ホゾ.JPG

 なんと、仕切り板の先が1.5×4.5ミリほどのほぞになっていて1.5ミリ角の楔が入っているではありませんか!
いや、これにはびっくりしました。こんな細い穴を空けるには特注のノミが必要だったでしょう。芸に遊ぶというか、なんとも粋な職人さんですねぇ〜。

 で、こんな仕事に対してどんなケースが有り得るのか随分考えました。お客様から提示された予算の上限は10万とこれまたびっくりでしたので、手間のかかる仕事も可能ですけど、この手間のかかったそろばんに対比させるには厚い無垢材を掘り込んだものにしたいなぁ、、、と考えたスケッチが次です。

004、そろばんケース.jpg

 身はカリンの杢でふたはヤマモミジの鳥目杢。閉まった状態はただの四角で開けるとアーチ型の掘り込みになっていてそのアーチ部分は指を入れる空間です。使い勝手から来る形をデザインとするという発想でようやく納得できました。このスケッチを描くまで3ヶ月お待たせしちゃいました。このアイディアに快諾いただき、年末にようやく作業に入りまして、

005、型.JPG

 これが削り出しの型で、四角の溝に材料が嵌ります。

006、型.JPG

 裏にはアーチ型に掘り込む溝が付いてます。

007、刳り物.JPG

 材料をしっかり固定して、

008、刳り物.JPG

 ルーターという機械で掘り込んで行きます。中央に見える直径15ミリの刃物は超硬という、ものすごく硬い金属でできていましてね。人造ダイヤの砥石じゃないと研げないものなんですが、これを自分できっちり研いで作業しました。

009、刳り物.JPG

 こういう風に無垢材を掘り込んで形を作る仕事を木工の世界では「刳り物」(くりもの)と呼びます。広辞苑によると、刳るは「えぐって穴をあける」とありました。

010、刳り物.JPG

 カリンも同様に、


011、刳り物.JPG

 半日かかって削り終えました。失敗するとやり直す材料がないのでものすごく緊張して終わった時には体がコチコチになってました(笑)でも結果は完璧!自分で研いだ刃物がこんな完璧な削りをしてくれたことに「おぬし、やるのお〜」とか自画自賛。

 そして年末年始にかけて2週間ほど寝かせて狂いを出させてから狂い取り。

012、平面出し.JPG

 機械の定盤にサンドペーパーを貼付けてその上でねじれと反りを直します。そうしてようやく完成したのですが、頭にゆとりがなくて完成写真を撮り忘れてお客様に発送してしまいまして、、、そしたら写真を撮って送って下さったのですねぇ、、、。

 なのでここから先はお客様が撮って下さった写真です。

013、刳り物のそろばんケース.JPG

 ヤマモミジという材はイタヤカエデと間違って混穫されるため材料屋さんで出くわすことはごく稀な材なんです。おまけにその鳥目杢でしょう?こんなものは運が良くないと手に入りません。十数年前に手に入れて保管してあった材です。刳り物というのは刳ることで材料のバランスがくずれてその後で形が狂うのです。だから新しい材よりもなるべく長い間寝かせてあった枯れた材の方がいいのです。

014、ヤマモミジとカリンの刳り物.JPG

 木口を見ると鳥目がずーっと成長している様が見えます。

015、カリンのリボン杢.JPG

 身のカリンの側面には順目と逆目が縞状に並んだリボン杢とも言える模様が出ています。



016、ヤマモミジの鳥目杢.JPG

 このあたりは鳥目に加えて縮み杢も見えます。そしてこれをちょっと開けると


017、刳り物.JPG

 アーチ状がちらり。

018、そろばんケース.JPG

 開けるとなるほどの指が入る空間でしょう?



020、円筒蝶番.JPG

 真鍮製の円筒蝶番はとっても高級感があって大好きな金物なんです。でもこれ取付精度がなかなか微妙なんですよねぇ、、、。

 お客様にもとても喜ばれて仕合わせなお仕事でした。

 Oさん、本当にありがとうございました!




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コメント 3

engrid

お祖父様への、親密な愛情と敬意を感じています
愛用の格別なしつらえの一品を、大切にと思う心
それに、応えるくにさんの、作品、
品格を、感じ、美しいですね、、閉じられた姿の端正さ、すばらしいです、
by engrid (2017-01-24 17:35) 

ヘルミーネ

こうしてお祖父さまが愛用されていた品物がさらに長く未来につながるのですね。
大地に根ざして空に向かう木。
丁寧に造りだされて新しい生命を与えられる木。
癒し、力を与えてくれる木。
この時間を創ってくれたkuniさんに感謝です。
by ヘルミーネ (2017-01-25 00:58) 

みち

記事、見逃していました(><)
無垢のケース、スゴイです!光ってますね!!
ルーターでカリンを削ってしまうのって、
kuniさんの刃のお手入れが良いからですね!

卒業制作で作ったチークの鏡台、鏡の部分を
ルーターで切り抜いたのです。凸凹で整えるのが
大変でした^^;
by みち (2017-03-28 00:46) 

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