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折りたたみの裁縫机(特注の裁縫机) [折りたたみの裁縫机]

 
 もう何ヶ月も前のことですが、ある方から特注の裁縫机の問い合わせをいただきました。退職を期に趣味の裁縫をするのに長年思い描いて来た、折りたたみの裁縫机を作ってもらう人をネットで探すうちに僕のブログを見つけて下さったのだそうです。「特注で物をつくるのはけっして安くない」というお話にも「理解している」ということで工房に打ち合わせにいらしてから2度図面を書き直してやっと決まりました。ご予算は20万。

001、特注の裁縫デスク−1,.jpg
 両側に天板がぶら下がる形で持ち上げて板足をセットすれば約3倍の面積に天板が広がります。上の2段の引き出しは糸巻きが入り、3段目にはミシンが2台収納できます。折り畳んだ寸法はなるべく小さくかつ入れる物は決まっているので、引き出しの中の寸法はミリ単位の設計になり苦労しました。

002、特注の裁縫デスク2.jpg
 蝶番やキャスターなどで動きがある家具は耐用年数を出すことに難しさがあります。幸いこの方は見かけの高級感にはこだわられていなかったので、予算(=手間)を耐用年数を上げることに集中できました。

 どんな点かと言うと、まず
003、シナの面材.jpg
 
 シナランバの木口に貼る面材をすべて無垢の厚いものにすることでした。


004、シナの無垢材と突き板.jpg

 特注家具の場合、木口の処理は写真下の0.6ミリ厚の単板(たんぱん)を貼るのが普通です。でもこの場合、角にダメージを受けるとたやすくランバコアの断面が顔を出してしまうことになります。これを職人用語では「あんこが出る」という言い方をします。今回の家具は裁縫という作業をするための家具ですから簡単にあんこが出てしまってはどんどんみすぼらしくなってしまいます。そこで面材はすべて無垢としたわけです。ただ単パンはゴム系の接着剤でぺたぺたと簡単に貼っていけますが、無垢の面材になると所謂木工ボンドでプレスで長時間、圧力をかけて接着しなくてはいけませんから、0.6ミリの単パンと無垢の面材では手間が圧倒的に違ってくるのです。見た目の豪華さにこだわらないことが幸いしているケースですね。

005、シナの付け面.jpg

 ランバの木口に面材をプレスして数時間放置した様子です。この後、手鉋でランバの平面に合わせて削ってゆきます。

006、シナランバに付け面.jpg

 きちんと平に削った後です。面材は約50枚使いましたから当然プレスから鉋がけの作業も50回しているわけです。

 

 さてもうひとつの気をつけたのは蝶番の選定と取り付け方です。見栄えを優先すれば小さな蝶番でさりげなく行きたいところですが、天板とそれを支える足を動かす蝶番にはすくなくとも上半身の荷重がかかります。問題は蝶番自身の強度ともうひとつ盲点は蝶番を取り付けるための木ねじを保持する強度が木材の方にあるか?ということなんです。
 これは現代の木工がかかえる問題点のひとつでもあるのですが、ランンバコアの芯になっている「ファルカタ」という材は桐よりも柔らかく、木ねじの保持力が弱く抜けやすいのです。

007、ピアノ蝶番.jpg

 そこでまず蝶番自体はピアノ蝶番という2メートルの長さの蝶番をパーツの幅ぎりぎりの長さに切って使います。

008、ピアノ蝶番.jpg

 蝶番の厚みがなるべく隠れて見えないように厚みぎりぎりのしゃくりを入れて、仮に木ねじをもみつけてみましたが、案の定保持力は弱い。

009、ピアノ蝶番.jpg


 そこで芯材のファルカタに対してやや硬めの材で8ミリのダボを埋めてそこに木ねじを効かせるという方法にしました。軟弱な地盤に建物を建てる時の摩擦杭と似た考え方ですね。ダボは70箇所以上は埋めたでしょうか。

 動きのある家具を長く快適に使ってもらうためには実はこんな見えない苦労があり得るのです。安い家具が数年で壊れる理由はこういう見えないところの手間を省いてしまうというケースが多いものです。それを評価できる人ってめったにいませんからね、、、。





010、.jpg

 蝶番を仮止めして足と天板の動きをチェックします。0、数ミリ単位の微調整をしながら

011、.jpg

 蝶番の取り付け位置が決まって来ました。



012、彫り込み引き手.jpg

 引き出しの口板の引き手は出っ張らないようにという要望で表裏から2種類の刃物で削った引き手です。

013、彫り込み引き手.jpg

 僕のお気に入りの手法で、シンプルで使いやすいのですよ。


 さて加工はすべて終わったので塗装です。
014、ウレタンのガン吹き.jpg


 ちょうど埋めダボが17箇所見えてますね♪

 今回はいつもよりかなり厚く塗りたいので8回以上は塗装しました。特に天板は10回は塗装してるんですよ。シナという木は柔らかい部類なので硬いウレタンの塗膜で保護するようにですね。


015、ウレタン塗膜.jpg

 ほら完成した天板はピッカピカです。





016、折りたたみの裁縫デスク.jpg

 これが折り畳まれた様子。そして天板を上げて、板足で支えると


017、折りたたみの裁縫デスク−2.jpg

 どどんと大きな作業面積!



018、折りたたみの裁縫デスク−3.jpg

 ミシンを入れる引き出しは横から出し入れしやすいように右の側板をなくしました。



019、彫り込み引き手.jpg

 引き手もばっちり、中までちゃんと塗ってありますから、指を入れてもざらざらしていません。


020、蝶番と付け面.jpg

 ぴたりとくっついた面材と蝶番の納まりです。

 長く、快適に美しく使ってもらえるように面材と蝶番と塗装の3点にこだわった特注の折りたたみ裁縫机でした。













 「 糸 」 その2


 前の記事で書いた中島みゆきさんの「糸」。
 この動画を見たときぽろりと泣きました。
 この詩は必ずしも男女の出会いの話でもなく
 また歌を創る人の心情でもあるのだろうと思いました。
 
 ものつくりってちょっと特殊でしょう?
 作り手の心情にぴたりとはまるものには出会ったことがなかったのです。
 でもこの詩は僕が長い間努力してきた心情にぴったりだったのです。

 「縦の糸はあなた 横の糸は私
  織りなす布は いつか誰かを 
  暖めうるかもしれない」

 そう、僕は初めてお客さんに逢った時、できる限りおしゃべりをします。
 家族構成、趣味、好きな物、きらいなもの、、、、
 そうしてどんなものを創れば喜んでもらえるのか、癒されるのかを
 考えます。

 お客さんが縦糸で僕が横糸。織りなす布は作品のことなんです。
 僕の作品が人の心を暖めたこともある、傷をかばったこともある。
 でもこのきびしい時代に自分という糸が心許なくてふるえてしまうこともし ばしばです。

 そう、この数ヶ月は完全にへこたれてました、、、。



 「逢うべき糸に 出逢えることを
  人は仕合わせと呼びます」

 

 ずっとね、自分に無理を強いてきたんです。
 自分の未来を切り開くために、無理にでも更新してきたのです。
 でも無理はやっぱり無理で体が言うことを聞いてくれなくなてしまった。
 もし、無理強いではなくて、自然にできるようになれたらと漠然と思っていて、
 そんなときにこの詩にやっと出逢えました。
 そしたら、不思議と「そうだよね、その仕合わせにまた出逢えるようにまたがんばろうかな?」
 と自然に思えたんです。

 中島みゆきさんに逢えたら、「ありがとう」と言いたい気持ちです。

 
 

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