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ダイニングチェアー 「つつみ」   [ダイニングチェアー「つつみ」について]

001、木工家、国本貴文、ブラックチェリーのダイニングチェアー「つつみ」.jpg

  ダイニングチェアー   「 つ つ み 」          ブラックチェリーに皮張り

 

 長い間、円だから「M チェアー」としてきたこの椅子ですが、あまりに安易なネーミングなので、そろそろちゃんとした名前を付けたいと思い、このところ広辞苑と漢和辞典を手に、悶々と考えていました。

 

 そもそも、この椅子の原型が出来たのは、1988年のこと。古!

002、木工家、国本貴文、イタヤカエデのダイニングチェアー.jpg

 当時は、当別町にある財団法人 スウェーデン交流センターというところに勤めていて、立ち上がったばかりのこの財団の商品として考えたもので、冒頭の写真と比べると、パーツの断面はまだ角があって、痛い感じがしますでしょ?

 で、一年後にマイナーチェンジをしたのが次の写真です。

002-1木工家、国本貴文、ナラのダイニングチェアー.jpg

 アームの外側と前足の頂点を丸くして幾分か、柔らかさが出て来ました。

 その後、独立して1993年に下の形になりました。

003、木工家、国本貴文、ダイニングチェアーの構造.jpg

 今の雰囲気にずいぶん近づきましたけど、貫の後ろが二本の後ろ足に向かってV字になっていて、まだ合理的な構造とは言い切れませんでした。そして15年前にやっとほぼ今の構造にゆきついたのです。

004、木工家、国本貴文、ダイニングチェアーの構造.jpg

 貫と足のジョイントを比べると、

005、木工家、国本貴文、ダイニングチェアーの組ジョイント部.jpg

 右が17年前で左が15年前。違うでしょう?右の組み方はデンマークの家具などによく見られる手法で、組み手のダボやホゾの長さをかせぐために、ジョイント部だけ足を厚くして、他の部分は削り出しによって薄くして、全体としてはスマートに見せる手法です。

006、木工家、国本貴文、ダイニングチェアーの前足.jpg

 前足も変わりました。パーツは楕円に近い形で統一しました。大きく変わった時点だけをお見せしていますが、細かい変更はもっとたくさんあって、22年間改良を重ねて、去年になって、やっとこのデザインが完成したと納得できたのです。膨大な時間を費やした、ほんとに長い道のりでした。

 

 

007、ウェグナー1.jpg

008、ウェグナー.jpg

 この22年間、いいお手本であり、目標であり続けたのは、このウェグナーの椅子。彼の椅子の良さは個々のパーツに表情があることと、パーツとパーツの間にある空間のバランスが美しいことですね。 

 それをお手本として自分の椅子がこのウェグナーの椅子と並べられても恥ずかしくないレベルに高めようと、こつこつ努力してやっと納得できたのです。

 

 

009、y-chair and 木工家、国本貴文の「つつみ」 .jpg

 こうして並べても、どちらにも、それぞれの良さがありますでしょう?

  改良をする時に絶対にはずせなかったのは、この椅子の第一の特徴になっている二本の後ろ足。

 それともうひとつ、花びらが座る人をやさしく包み込むようなイメージです。

 

 

 

 

 この椅子に付けた名前の「つつみ」は、この「包み」から付けたのでした。

010、ダイニングチェアー「つつみ」.jpg

 「 つ つ み 」の特徴はまず、アーム高が645ミリしかないので、よほど厚い天板でない限り、天板の下にすっぽり入ってしまうこと。掃除の時にじゃまになりにくいですよね?

010-2、ダイニングチェアー「つつみ」のスタッキング.jpg

 それと、4脚までスタッキングできること。

 そして細部の特徴は、

011、ダイニングチェアー「つつみ」のダボとくさび.jpg

 足の頂点に凸Rの面が取ってあり、組み手がダボとくさびで抜けにくい構造になっていること。

012、ダイニングチェアー「つつみ」のアーム.jpg

 アームの木口も前足と同様に凸Rに面が取ってあって、手触りが優しくなっていること。

013、ダイニングチェアー「つつみ」のアームと後ろ足.jpg

 アームの木目、足の木目にも気を使い、マクロの鑑賞にも耐えられる?こと。などでしょうか?

 

 僕のアイテムの中にダイニングチェアーはこれ一種しかありません。椅子のデザインって、ほんとに難しい。一番厳しい目で見られる家具といえるでしょうね。デザイナーの数だけ椅子のデザインはあるかもしれません。だから、ひとつでも誇りに思える椅子のデザインがあったらそれでいいのではないかと思っています。もちろん挑戦し続けるでしょうけどね。

 

 

 

 ただ、今、僕はここso-netでブログを始めてから、それまで気付いていなかったものすごく大切なことに気が付きました。それはモノつくりに大切なことは、デザイン、技術の他に「ストーリーだ」ということです。

 そのデザインに、技術に至ったプロセス。注文に至った物語。材料、それ自体の生い立ち、製作工程。実はそれらのストーリーに光を当てることこそ、「付加価値とは何か?」いう漠とした問いの答えがあると気が付いたのです。

 今まで、そのストーリーは説明する必要はなかった。ところが時代はそれをしなくてはいけない状況になって来ている。僕はやっと、そこに気が付いたんですね。このブログが果たすべき役割はまさにここにあります。

  そんなわけで、年内をめどにこのブログにショップを統合する予定です。この点に関してはずいぶん悩んだのですが、僕が試したいショップの形はやっぱりそういう形かな?と今は思っています。

 

014、「つつみ」ダイニングセット .jpg

           中国産桑のダイニングセット 「つつみ」     テーブル ¥400、000

 

 「つつみ」は一脚10万(張り地によって上下します)で最低4脚からの受注になります。


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nao

「つつみ」 いい名前ですね
その椅子に座ると 包み込まれるような安心感がある・・・
少し元気になられたようで安心しました
by nao (2010-10-30 23:32) 

はくちゃん

おはようございます
素敵な名前になりましたね
歴史がある椅子なんですね

by はくちゃん (2010-10-31 09:53) 

しょうたく

ディテールの変化がとても興味深いです(^_^)そのときの造る思いが形に表れていますよね。とても勉強になりました。
by しょうたく (2010-10-31 12:18) 

opas10

>今まで、そのストーリーは説明する必要は
>なかった。ところが時代はそれをしなくては
>いけない状況になって来ている。

kuniさんがストーリーを語らなければいけないのは、自分の取り組みそれ自体をブランドにして、広げていくためなんじゃないかなと思っているんですよ。しかも多くの読者と一緒になって、思考錯誤しながらブランドを作り上げていく。
このブログはそういう役割を果たす場だであると定義したら、ショップとブログの統合するというのは必然なんじゃないかと感じています。
by opas10 (2010-10-31 14:40) 

sodep

全体のストーリーと一つ一つのストーリーと
織物のように縦線 横線が絡み合って 結果作品が生を受けて世の中に出てくる それを成しているkuniさんってやっぱすんごい人間ですよ!
何度打ち上げられたってぐおぉ〜!って大海原に飛び込んで どんどん強くなったのでしょうね

ショップとの統合 いい案だと思います
もっともっと多くの人にkuniさんを見せびらかさなきゃ(^^

いつかkuniさんに注文できるように私も仕事チマチマがんばります∟(^^;)」
by sodep (2010-10-31 23:10) 

chibiroh

寒くなってきて動きが鈍くなってきております^^;
私もねじまいていきたいと思いますっ!!!
by chibiroh (2010-11-01 06:37) 

miyake

芸術ですよね。もはや彫刻のような印象です。それでいて、実用的な要素も必要なわけですから、家具ってすごいと思います。
by miyake (2010-11-01 12:47) 

レイリー

またもや素晴らしい!
芸術と使い勝手が高次元で調和しているように感じます。
「つつみ」大変に良い名前です!
一度使ってしまったら離れられなくなりそうですね。
脚の見事なR、何と言っても美しい継ぎ方。
それでいて実際の使用の事が考えられている。
惹かれますね~
ストーリー、大事だと思います。
それが分からない、見えにくいから大事にしなかったり、価値が分からない。。。値段だけじゃないんですよね、物造りは!
このところソネブロ調子悪くて・・・(私のつないでるプロバイダの問題かな?)訪問が遅れまして申し訳ございません <(_ _)>
by レイリー (2010-11-01 12:53) 

engrid

一つでも納得いくものが、すばらしいですね
ベストと思える一脚の椅子に込められた、ストーリーは 作り手の創造の歴史、変遷ですね
譲れないこだわり、美意識、そして生まれた椅子のすばらしさ、バックが知らされると、尚に、、そのものの対する感動が強くなります

いってくださ〜〜〜い
by engrid (2010-11-01 17:55) 

kuni

>naoさん、とっても心配してくださったのね、、、。ありがとう。状況は何も変わらず、悪いままで、自分の気持ちを切り替えるしかないんですねぇ、、、。いったいどれだけ耐えれば神様は許してくれるんでしょうねぇ、、、。

>はくちゃんさん、「これが、何年のことだっけ?」って思い出すたびに、年をとったことを思い知らされるんですよ!時間だけはどんどん過ぎて、、、はて、自分自身は、、、???なんですけど。(^_^;)

>しょうたくさん、お!さすが建築家さんですね。「ディテールの変化がとても興味深いです」と来ましたか?やっぱり全体を貫くコンセプトとどう一致させるか?ですよね。
 ありがとうございます。

>opas10さん、今日の記事の後半はopas10さんを念頭に書いたら、見事に反応して下さいましたね!
 しかもおっしゃることが、ずばりです!これは後日なんらかの形で改めて書きますね。

>sodepさん、僕ね、何を隠そう、泳げないのよ~!ははは!!!いやいや、僕は意気地なしですよ。弱くて弱くて、、、。

 お、ショップと統合案、賛成ですか?やっぱりみんな理解してくれているんですねぇ。ありがたいことだなぁー。

>chibirohさん、気持ちよくわかります!寒くなると事務所のぬくぬくから出て下に降りていく気がしないんですよ、、、。


>miyakeさん、「もはや彫刻のような印象です」って、これ嬉しいですねー!そう、用途を剥ぎ取った時、純粋に形として美しいかどうかって、だいじですからね~。

>レイリーさん、大変褒めていただき、ありがとうございます!
「つつみ」って悪くないですか?よかった。
 ストーリー、大事ですよね!モノつくりが値段だけなんて、あっちゃいけませんよそんなこと!(笑)
 このごろ、ソネブロ、間違いなく「変」ですね!

>engridさん、そうですね、これは僕の創造の歴史、、、かなぁ。うわー考えてみたら、僕がまだ29歳ですよ!!!?あーびっくりした。(笑)

 いってみま~~~す! 
by kuni (2010-11-01 18:33) 

かに吉

すてきなネーミングですね♪
面取りされた光沢のある表面をみると
きっと触り心地がとってもいいんだろうなぁって想像してます ^^
by かに吉 (2010-11-01 22:56) 

HEIJI

あー、あのダイニングセットは旧ブログの記事でしたか。
つつみ。良い名前ですね。
・・・つつまれたいなあ〜
by HEIJI (2010-11-02 00:10) 

S_S

ステキな事だと思います^^
それでこそkuniさんの魅力がホントの輝きに
変わる瞬間なのではないでしょうか!?
物語は何の興味の無い方でも引き付ける魅力があり、それこそkuniさんの作品の最高のスパイスだと私は思います♪
楽しみですね^^

by S_S (2010-11-02 09:25) 

kuni

>かに吉さん、名前okですか?おおむねステキ、の声が聞こえて、一安心ですよ!ありがとう~。

>HEIJIさん、あれ?旧ブログのあのダイニングの記事って見ていなかったんでしたっけ?だとしたらほんとに間が開いてたんですね、、、。
 うふ、つつまれたいでしょう!?

>S_Sさん、ああー、スパイスね!?いい言葉だなぁ、、、。粋なことをいいますねぇ、ほんと。ショップとの統合、賛成してくれますか!?やっぱりよき理解者ですねー、ありがとう!

by kuni (2010-11-02 18:59) 

tromboneimai

とても座りごこちのよさそうな椅子ですね♪
こんな椅子をご御自分でデザインできる方を
尊敬致します。
我が家の食卓は、旭川の確か匠工房?の
同じような大きさのテーブルがあり、結構
気に入っています。でも子供たちも
家を出てしまい、二人きりの寂しい食卓ですが(笑)
by tromboneimai (2010-11-02 20:57) 

kjisland

スウェーデンの財団、それにデンマークのハンス・ウェグナー!!!!!これまで私自身、kuniさんの創作では、結構、日本的な「匠」を感じてきたんですが、デザインでは、世界に根を張っておられたんですね。まあ、椅子は西洋発祥でしょうから、それもあるかもしれませんが、でもでも、kuniさんの世界にまた一歩近づいたようで嬉しい気持ちでいっぱいになりました。「物創りの匠」の成長記録としても、このブログとてもすばらしいと、改めておもいました。感謝です。
by kjisland (2010-11-06 04:33) 

kjisland

別の味方からすると、創作ってイメージ優先みたいに思われるけれど、その奥でどれだけ「言葉で格闘しているのか」ではないでしょうか?イメージって決まってしまうようで、実は決まらない不特定。しかし、それを言葉で定着させることによって、イメージに命が吹き込まれる。
私は、それをkuniさんのブログで感じてきました。
by kjisland (2010-11-06 04:38) 

kuni

>tromboneimaiさん、旭川の匠工芸ですね?いいものをつくる会社です。知人がそこの重役になっていますね。
 お子さんはもう独立されているのですか。僕からすると子育てが終わったお立場はうらやましいです。
 仕事場は盤渓です。プロフィールの下に住所を明記しました。機会があったらお立ち寄りください。

>kjislandさん、ほんとにじっくり読んでいただいているのですねぇ。ありがとうございます!
 大学時代、4ヶ月ほどヨーロッパを放浪し、社会人になって、そういう変わった仕事場にもいましたので、異文化との生の交流の機会には恵まれました。その中でしみじみ自分の背景に間違いなく日本の文化があることに気が付きました。そしてそれは世界に誇れるものであることも。  
 だから自然とどっちに寄るでもない、世界に誇れる日本の形を目指しているようなところがあります。

 僕の能力のデザインの部分だけを切り離すとそれはたぶんずいぶん脆弱なものなんだろうと思います。僕は形のイメージだけでデザインできるタイプではないからです。
 僕のデザインは技術的な可能性からデザインを起こすタイプで、その高まりとともにデザインの巾も広がってきました。そして、言葉はその方向に狙いを定める役目をしているのかもしれませんね。

by kuni (2010-11-06 09:02) 

寂光

kuniさんがこうしてブログで製作過程を書いて下さることで、知ることの出来ない技術や製作に対する思いなどしり心より喜んでいます。
そして何よりお互いにソネブロであったこと、この偶然にも喜びを感じています。
今回の記事では一つの家具の変遷を垣間見てkuni
さんの主義に改めて感心しています。
by 寂光 (2010-12-10 09:36) 

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